マティス米国防長官に「尖閣」と「駐留経費」で手の内を見透かされても有頂天のアベ・稲田組

こと日本と米軍関係者との間には、国境がない。米軍と何らかのつながりのある関係者なら、日本への入国は全くのフリーパスだ。彼らは何のチェックも受けずに都心へ入ってくる。

米軍やアメリカ政府の関係者は、横田や横須賀などの米軍基地に降り立ち、そこから車で1時間ほどの東京都心・六本木にある「赤坂プレスセンター」と称されるビルに入る。しかも、車で1時間もかけたりはしない。軍用ヘリで横田や横須賀の基地から直行するために、ビルの屋上には専用のヘリポートがしつらえてある。

そこから車で東へ5分ほどのところにアメリカ大使館がある。また、南へ5分ほど行けば「ニュー山王ホテル」と名前が付いた高級ホテルがあるが、これはれっきとした米軍基地で、入り口には銃を持った警備員が立っている。基地だから、当然、治外法権だ。

いつ来ていつ帰ったのか、日本政府からは何のチェックも受けない。したがって外務省も出入国管理事務所も(もちろん、厚労省麻薬取締官も)、日本国内に現在何人のアメリカ人がいるかは全く把握していないのだ。

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横田基地に到着したマティス米国防長官(左から2人目)=産経新聞

そんなアメリカ人の一人、“マッド・ドッグ”ことトランプ政権の重要閣僚・マティス米国防長官もこのたび、同じようにして来日した。3日に安倍シンゾ首相を“表敬訪問”したのに続き、4日にはカウンターパートである稲田朋美防衛相とも、初となる防衛相会談をした。

マティスにとっては国防長官就任以来初の外遊となる今回、訪問先に韓国と日本を選んだ。それは東アジアで、米国にとってもっとも重要な同盟国(ポチ)である両国について、トランプが大統領選挙中、繰り返し米軍駐留費の負担増と核武装を促す発言をしていたからだ。

トランプ政権にとっては、これらについての両国民の不安を払しょくしつつ、両政府に対しては新たなスタンダート(トランプ基準)に基づいた同盟の深化と構築を求める必要があった。

これまでトランプとアベは直接会ったり、電話会談を行ったりしたが、いったいどんな話の内容だったのか、ほとんどわからない。TPPが反故になったことと、より多くの防衛(費)負担を日本に求めているらしいことぐらいが見えているだけだ。恐らく、一方的にトランプに押しまくられたと想像するに難くない。

そのために、今回のマティスの来日と日米防衛相会談は重要な意味を持っていた。

新聞報道などによれば、4日の会談では日米同盟の抑止力と対処力を高める点で一致。稲田は「日本は防衛力を質も量も強化し、自ら果たしうる役割の拡大を図っていく」方針であることを、明確に表明したことになっている。

その一方で、緊張が高まる南シナ海では、日米が「関与の強化」で一致したことにより、自衛隊の軍事的負担が拡大する可能性が高まった。ここまでは想像通りだ。

会談の結果、具体的に東シナ海や南シナ海では、アメリカ側がどのような軍事的オプションをとろうとしているのか、それに対して日本側がどのような役割を負っていくのか、などは不明だ。

マティスは「現段階で軍事作戦は必要ない」と述べたとされるが、今はそうでも明日、あさっての作戦は否定していない。

注目された米軍の駐留経費問題については、マティスが「(現在の)日本の在日米軍経費負担は、他の国の手本になる」と述べたことから、大方は“現状維持”ではないかとの安堵の観測が流れている。

だがこのことは逆に言えば、日本の負担が他の米軍駐留国に比べ、突出して多いことを示しており、相手に褒められたと言って喜んでいるのはバカとしか言いようがない。日本の“国益”を言うのなら、むしろ減額を交渉するのが筋だろう。

稲田は会談後の記者会見で「同盟の分担は金銭的なものに限るわけではない」ことを強調し、安保法の整備によって自衛隊が海外で活動しやすくなったことや、集団的自衛権によって米艦の護衛が可能となったことなどを、喜々として自慢げに語った。

駐留経費負担増が当面求められないことに安堵の態度を示し、そのうえで、どこまでもアメリカにくっついて行く飼い犬的姿勢を見せたことによって、日本側は、今後の対米軍事協力交渉で見せる切り札を早々に切ってしまったことになる。“トランプ・ゲーム”のプレイヤーとしては全く稚拙すぎやしないか。

今回の会談で、日本側が大々的に“手柄”として宣伝しているものに、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用がある。

マティスが「(尖閣は)日本の施政下にあり、(米国の日本防衛義務を定めた)日米安保条約第5条が適用される」と述べたという点だが、それは何ら珍しいことではなく、今までもアメリカ側が繰り返し言ってていることである。近くは2014年にオバマ前大統領がはっきりとそういっている。

だが一方で、アメリカは、サンフランシスコ講和条約の解釈上、尖閣諸島の主権問題(領有権が日本と中国のどちら側に属するのか)については、一貫して明確にしていない。アメリカとしては、日中、どちらの肩も持たないで、“永遠の火種”として残しておくことが国益にかなっているわけだ。

今回のマティスの発言も、「尖閣は日本の施政権下にある」現状を追認しただけのことであり、安保条約第5条でも、尖閣が日本の施政権下にある限り、という条件のもとに米側の防衛義務があることを謳っているに過ぎない。

このことは、仮に何らかの事態が生じて、尖閣の施政権が失われた場合には、安保条約は発動できない(しない)ことを意味する。たとえば、第三国が尖閣を一気に占領したとすれば、日本の施政権下にあるとは言えなくなり、米軍は手を出さなくても済むことになるわけだ。

アメリカにとっては、尖閣のような岩ばかりの小島は何の利用価値もないのであって、その領有権をめぐって(中国と)一戦を構える気など、毛頭ないだろう。

米側は駐留米軍経費のうち4分の3を日本側に負担させ、なおかつ膨大な金額の「思いやり予算*」を出させることにまんまと成功している。

*「思いやり予算」=米国では「host nation support」の表記を使っているそうな(「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」より)。

そのうえで、在沖縄をはじめとする在日米軍は、ベトナム戦争やイラク戦争を見るまでもなく、日本に置いた基地を拠点とする巨大な軍事プレゼンスによって、「世界の警察官」としてのアメリカの国益を十分にサポートする存在感を示している。これこそ「安保ただ乗り論」と言わずしてなんというべきか。

トランプ政権の底知れなさは、今後ジワリと日本を締め上げることになるかもしれない。稲田・マティス会談で、マティスは日本側の手の内を読み切った(下品な言い方をすれば、「稲田はマティスにケツの毛まで読まれた」といったところか…欠礼、いや失礼)。

マティスは帰国後、トランプに会談の感触を逐一伝え、次の一手を練ることになるだろう。何せ、トランプの全幅の信頼を得ているマッド・ドッグのことだ。トランプとの役割分担がありうることを、十分に見ておく必要がある。

本番は、10日にワシントンで行われるアベ・トランプ会談に持ち越された。知力、学力いずれも足りないアベにとっては、手ごわい相手であることは間違いない。でんでん。

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パームビーチのプライベートクラブでゴルフなどに興じている場合かね、極楽とんぼ、は。

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日米防衛相会談
稲田氏 防衛力強化を明言 マティス氏 駐留経費負担を評価

(東京新聞2017年02月05日朝刊)

稲田朋美防衛相とマティス米国防長官は4日、初の日米防衛相会談を防衛省で行い、日米同盟の抑止力と対処力を高める必要性で一致した。その後の記者会見で、稲田氏は「日本は防衛力を質も量も強化し、自ら果たしうる役割の拡大を図っていく方針だ」と防衛力強化を明言した。トランプ米大統領が選挙中に言及した在日米軍駐留経費の負担割合見直し問題に関し、マティス氏は適切に分担されているという認識を示した。

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両氏は約1時間半の会談で、中国の南シナ海への海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発などを中心に地域情勢を協議し、連携することで一致した。

会談後の会見で、マティス氏は、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島が「日本の施政下にあり(米国の日本防衛義務を定めた)日米安保条約第5条が適用される」と述べた。

トランプ氏が大統領選の期間中、米軍の撤退もちらつかせて日本側に要求した駐留経費負担増について、会談では議論されなかった。しかし、その後の会見で、稲田氏が「同盟の(負担の)分担は金銭的なものに限るわけではない」と指摘し、防衛力を強化していく方針を示すと、マティス氏は「コスト負担で日本は(米国と同盟関係にある)他の国にとってお手本になる」と評価した。

米軍普天間飛行場【沖縄県宜野湾市】移設問題では、名護市辺野古沖の新基地建設が「唯一の解決策」という従来の立場を改めて確認した。(生島章弘)

(転載おわり)


これっきゃない!“マッド・マティス”対策の決め手

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【日米防衛相会談】軍事的負担 拡大の懸念
(東京新聞「核心」2017年02月05日朝刊)

稲田朋美防衛相とマティス米国防長官による日米防衛相会談は、自衛隊の軍事的負担が拡大する可能性を高めた。稲田氏は日米同盟をめぐり、マティス氏に「わが国の役割を強化する」と明言し、中国が軍事拠点化を進める南シナ海への対応でも「関与の強化」で一致したからだ。在日米軍駐留経費の日本側負担は、マティス氏から一定の評価を受けたが、トランプ米大統領の真意は見通せない。(新開浩、横山大輔)

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共同記者会見を終え、握手するマティス米国防長官㊧と稲田防衛相=4日午前、防衛省で

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南シナ海 関与強化で一致

■分担

稲田氏が会談後の共同記者会見で強調したのは「同盟の分担は金銭的なものに限るわけではない」ということだ。

稲田氏が金銭以外の分担例に挙げたのが、安全保障関連法によって可能となった自衛隊の活動。他国を武力で守る集団的自衛権の行使や、警戒監視中の米艦を第三国の妨害行為から守る「平時の防護」を列挙し「日本は世界の平和に貢献し、同盟を強化している」と強調した。実行すれば自衛隊が武器を使って米軍を守る活動に直結する。

中国の進出で緊張が高まる南シナ海に関しても、稲田氏は沿岸国の海洋警備能力を向上させる支援策に取り組む考えを示した。会談後、防衛省幹部は南シナ海で日米共同訓練を行う可能性も指摘した。

南シナ海を巡っては、ハリス米太平洋軍司令官が2015年に来日した際、自衛隊による哨戒活動への参加を「歓迎する」と発言した経緯がある。

日本の南シナ海への「関与の強化」が、こうした米側の期待感を一層強めることも予想される。日本側の取り組みが不十分と判断すれば、具体的な行動を求めてくる可能性もある。

■真意

在日米軍駐留経費の負担増は、3日の安倍晋三首相とマティス氏との会談に続き、日米防衛相会談でも議題に上らなかった。記者会見でマティス氏は日本の駐留経費負担を、同盟諸国の「手本だ」と評価。ひとまず増額圧力は遠のいた。

防衛省幹部はマティス氏の発言に「びっくりした」という。トランプ氏は大統領選で在日米軍駐留経費の日本側負担増に再三、言及し、マティス氏も米議会公聴会で「応分の負担」を求める意向を示したからだ。

日本側の負担は、米国防総省が公表した02年の駐留費負担率によれば、他の駐留国より突出して高い74・5%。退役海兵隊大将で沖縄勤務の経験もあるマティス氏は、現状に一定の理解を示したとみられる。

しかし、トランプ氏も同様とは限らない。難民・移民の入国停止やメキシコ国境への壁建設など、選挙戦での主張を実行する大統領令を次々と発出している。

首相は昨年11月にトランプ氏と会談したが、当時は就任前。1月末の電話協議でも駐留経費問題は話題にならなかった。10日にワシントンで行われる日米首脳会談は、大統領の真意を確かめる場にもなる。

(転載おわり)


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このキメ台詞、言えるかなあ?言えねぇだろうなあ!

この記事へのコメント

  • ぴこたろう

    日本や米国など、一国の指導者を
    なぜ呼び捨てにするのだ。
    「氏」とか「さん」とか「首相」とか、
    もっと呼び方があるだろう。
    何様のつもりで軽傷を省略するのか
    知らないが、読んでて不愉快だ。
    礼儀知らずめが。
    2017年02月06日 01:30
  • ayame

    >ぴこたろうさん

    コメントありがとうございます。
    あ、呼び捨てのことですかぁ。私は親愛の情を込めて敬称なしで呼んでいるんですよ。
    ほら、「ロン・ヤス」とか「ジョージ・ジュンイチロー」とかと同じなんですね。

    思い出しましたが、先日は「ウラジーミル」と呼びかけたのに、相手は「ゴスパジン・アーベ(安倍閣下)」と呼んでいましたね。「カネも出さないやつに、島はやらんぜよ」と言った人です。

    アーベさんはさぞかし、心が痛んだことでしょうね。「軽傷」でよかったですが…。
    こんな話でよろしかったら、またいらしてくださいな。
    2017年02月06日 16:37

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